なぜ休載が続いても『あひるの空』の存在感は失われないのか。その理由は、高校バスケットボールという競技の光と影を、これ以上ないほど生々しく切り取ったドキュメンタリー性にこそある。
身長の壁、才能の差、家庭環境の軋轢、そして不条理な敗北。作中のキャラクターたちは誰もが欠落を抱え、コートの内外で激しく葛藤する。1本のエンドワン、わずか数秒のディフェンスの遅れが人生の分岐点となる瞬間の描写は、経験者の胸を抉るリアリティを誇る。週刊少年マガジン誌上における他の人気作と比較しても、徹底して読者に媚びない作劇スタイルは唯一無二のポジションを確立した。
挫折を経験したことのない人間には描けない感情の襞が、ページ全体から溢れ出している。だからこそ、この漫画を愛する人々は、どれほど時間がかかろうとも日向武史という表現者が紡ぎ出す本物の言葉を待ち続けるのだ。