本作のもうひとつの巨大な軸が、清野菜名が演じた「川田レン」という女性の正体と、彼女の精神構造に隠されたトラウマです。物語冒頭では、ネガティブで弱気な天才美少女囲碁棋士・川田レンが、直輝(飼育員さん)の催眠術とパンケーキにかける特製シロップによって、超人的な格闘能力を持つ別人格「ミスパンダ」へと変貌する構図として描かれていました。しかし、この多重人格的な変貌の裏には、戦慄の血族ドラマが隠されていました。
10年前の山小屋放火事件で命を落としたとされていたのは、双子の妹である「川田リコ」でした。しかし、実際に生き残っていたのは妹のリコであり、死んだのは姉のレンだったという真相が中盤で判明します。母・麻衣子(山口紗弥加)は、優秀で奔放なリコばかりを偏愛し、気弱なレンを激しく冷遇していました。母の歪んだ愛を一身に浴びていたリコは、火災事故の際に姉のレンを見殺しにしてしまったという耐え難い罪悪感から精神を崩壊させます。
さらに恐ろしいのは母・麻衣子の精神的暴力でした。麻衣子は精神科病院の病室で、生き残ったリコに対して「死んだのはリコ。生き残ったのはあなたが大嫌いだったレンよ」と刷り込み続け、リコは自分自身を「川田レン」だと思い込むことでしか正気を保てなくなっていたのです。直輝の催眠によって呼び覚まされていた獰猛でアクロバティックな「ミスパンダ」の姿こそ、抑圧され封印されていた本来の少女「川田リコ」の無意識そのものでした。