オートチューンの起源は、音楽スタジオではなく石油探査の現場にある。開発者のアンディ・ヒルデブランドは、もともと音波を使って地層の構造を解析する地球物理学者だった。彼が地下探査のために開発した自己相関(オートコリレーション)アルゴリズムは、反射波のわずかなズレから地中のデータを正確に読み解くものだった。
ある日、妻との何気ない会話の中で「私の音痴を直してくれる機械を作ってよ」と言われたことをきっかけに、彼はその技術を人間の歌声に応用することを思いつく。音声をミリ秒単位で解析し、ピッチのズレを瞬時に検出して目的の音階へ補正する技術。こうして1997年、彼が設立したAntares Audio Technologiesから初代「Auto-Tune」がリリースされた。
それまでボーカルのピッチ補正といえば、テープを切り貼りするかサンプラーで気の遠くなるような手作業を重ねるしかなかった。Antaresの登場は、音楽制作業界のワークフローを一瞬で過去のものへと変えてしまった。