発見当初、現場に走った最大の疑問は「異物の正体は何か」という一点に尽きた。委託先製造拠点であるスペインのロビ・ファーマ(Rovi Pharma Industrial Services)の充填ラインを対象に行われた詳細な解析により、異物の実体は「SUS316」と呼ばれる医療グレードのステンレス鋼片であることが判明した。
原因は極めて物理的なものだった。製造ライン内のバイアル打栓機(キャッパー)のセッティング調整時、金属パーツ同士が想定外の接触を起こし、微小な金属粉末が削れ落ちていたのだ。このステンレス鋼異物混入事案は、ナノ粒子を扱う超高精度なバイオテクノロジーと、高速で稼働する重厚な機械設備との接合部で生じた典型的なアセンブリトラブルであった。