ボーカロイドカルチャーの旗手であるDECO27が手掛けたアプローチは、従来のポップスファンのみならず、次世代のクリエイター層にも計り知れない刺激を与えた。クリプトン・フューチャー・メディアが開発したバーチャル・シンガー「初音ミク」の歌声は、人間には不可能な発話スピードと音域の跳躍によって、特異な緊迫感を醸成する。
YouTubeを中心とする動画プラットフォーム上で、その中毒性の高いトラックは無数の二次創作を生み出した。肉体を持たない合成音声だからこそ、そこに吹き込まれた人間の生々しいエゴが際立つという皮肉。ボカロ曲というフォーマットが持つ批評性を最大限に引き出した好例といえる。