急激なスピードで情報が交錯する大阪の街。大学を卒業した梅守志歩は、IT広告会社で多忙な日々を送っていた。画面の向こうに広がる巨大な市場と、刻一刻と追われる数字。充実感はあった。しかし、どこかで自分の足が地についていないような感覚も拭えなかったという。
転機は、父が創業した「株式会社梅守本店」への転身だった。名物の「てまり寿司」をはじめとする寿司製造・販売を手掛ける企業だ。食を通じて人と人をつなぐ現場に身を置く中で、彼女の関心は「人間が真に満たされる体験とは何か」という根源的な問いに向かっていく。
2016年、彼女は大きな決断を下す。奈良県山添村への移住だ。決して逃避ではない。自らの手でゼロから空間を作り上げ、人が本来持っている感覚を取り戻す場を創出するための攻めの移住だった。