日本映画界において、寺島しのぶの存在感を決定づけたのが廣木隆一監督作『ヴァイブレータ』だ。心身のバランスを崩しながらも他者との交わりを渇望する主人公を、生々しいリアリズムで体現。国内外の映画賞を席巻し、演技派としての地位を確立した。
その凄みは若松孝二監督の反戦映画『キャタピラー』で極限に達する。四肢を失って生還した軍神の妻役を演じきり、第60回ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞。日本人女優としては左幸子、田中絹代に続く史上3人目の快挙を成し遂げた。飾り気のない生の感情を世界へ叩きつけた瞬間だった。