佐々木力氏が一代で築き上げたビジネスの頂点は、1998年に立ち上げた「リンク・インターナショナル(後のリンク・セオリー・ジャパン)」でした。ストレッチ素材を活かした美脚パンツを中心に、働く女性から絶大な支持を集めた「Theory」は瞬く間に大ヒット。2009年にはユニクロを展開するファーストリテイリングの完全子会社となり、佐々木氏自身もファーストリテイリンググループの上席執行役員に就任しました。
この事業売却と株式保有により、佐々木氏が手にした資産は推定200億円にのぼると報道されました。しかし、頂点を極めた直後の2011年8月9日、スキルス性胃がんのため60歳という若さで逝去します。
突然の別れとともに直面したのが、莫大な遺産の分配問題でした。日本の民法上、どんなに長年連れ添ったとしても、内縁の妻(事実婚)である萬田久子さんには法定相続権が1円も発生しません。
公式発表や当時の関係者の取材証言によると、佐々木氏は生前、自らの死期を悟った段階で弁護士を通じて綿密な遺言書を作成していたとされています。事実婚の妻である萬田久子さんには、生活拠点であった都内の豪邸などの一部資産が遺贈という形で手渡され、残る莫大な株式や金融資産は、前妻との子供たちを含む血縁の相続人たちへと公平に分配されたと伝えられています。
葬儀・告別式の場で見せた萬田久子さんの気丈な立ち振る舞いは、多くの会葬者の涙を誘いました。愛憎が渦巻く巨額遺産を巡る泥沼裁判に発展しなかった背景には、前妻側と子供たちの法的権利を十分に担保し、同時に萬田さんへの感謝を形に残そうとした佐々木氏の周到な配慮があったと分析されています。