結論から言えば、「んで」から始まる言葉は間違いなく客観的に実在する。ただし、それを理解するためには、私たちが普段当たり前のように使っている「日本語の音韻ルール」の枠組みを一度解き放つ必要がある。
国語辞典の金字塔である『広辞苑』をはじめとする主要な中型・大型辞書をめくると、五十音図の末尾である「ん」の項目には、極めてわずかな見出し語しか掲載されていない。日本の標準語において「ん」は撥音(はつおん)と呼ばれ、独立した音節というよりも「直前の母音の響きを鼻に抜いて閉じる」役割を担ってきた。そのため、語頭に「ん」が立つことは音声構造上、長らく排除されてきた歴史的経緯がある。
しかし、視野を世界へと広げると景色は一変する。アフリカ大陸、とりわけ中部から南部にかけて広がるバントゥー語群の言語群では、子音の前に鼻音を伴う「前鼻音化閉鎖音(/nd/ や /ng/ など)」が極めて日常的に用いられている。文字として書き起こす際、ラテン文字表記の「Nd-」に対して日本語のカタカナ表記では慣用的に「ンデ」が割り当てられてきた。つまり、外来語・国際標準の固有名詞というカテゴリにおいて、「んで」から始まる語彙は確固たる市民権を得ている。