「オリンピック放送権料は一体いくらなのか、なぜここまで高いのか」――多くの視聴者が抱くこの疑問の根底には、国際オリンピック委員会(IOC)が数十年にわたり構築してきた徹底した商業主義ビジネスモデルが存在します。
IOCの収益構造を公表資料から紐解くと、総収入の約73%をテレビ放映権料が占め、TOPパートナーと呼ばれるワールドワイドスポンサー協賛金(約18%)を大きく引き離しています。つまり、近代オリンピックという巨大イベントの財政基盤は、事実上、世界各国の放送局が支払う放映権マネーによって支えられているのです。
この放映権バブルを主導してきたのが、アメリカの巨大メディア企業であるNBCユニバーサルです。同社は2014年、2026年から2032年までの五輪6大会(夏季・冬季含む)のアメリカ国内向け独占放映権を、総額77億5,000万ドル(当時のレートで約8,000億円超、現行レート換算では1兆円以上)という破格の条件で一括購入しました。さらにIOCへの追加ボーナスとして1億ドルを支払うなど、突出した資金力でIOCの最大顧客の座に君臨しています。
この米国市場での価格設定が世界基準のベンチマークとなり、アジアやヨーロッパを含む各国の放送権料も連鎖的に吊り上げられていきました。かつて北京五輪や東京五輪で競泳の決勝レースが異例の「午前中」に設定されたのも、アメリカのプライムタイム(ゴールデンタイム)に合わせて巨額の放映権料を支払うNBCの意向が働いた結果です。五輪放映権高騰の真相は、IOCの収益最大化戦略と米メディアの利害が完全に一致した構造的なマネーゲームにあります。