ヒーローの偶像を脱ぎ捨てた後も、篠田の進化は止まらなかった。NHK大河ドラマ『草燃える』(1979年)では源範頼役を好演。権力の狭間で苦悩する武将の儚さと優しさを陰影深く表現し、本格派俳優としての評価を決定づけた。時代劇の枠に収まらない重厚な台詞回しは、多くの演出家を唸らせた。
さらに1992年の大ヒット東宝映画『ゴジラvsモスラ』では深沢拓也教授役を務め、知的で冷静なアプローチの中に確固たる信念を宿した演技を披露。特撮作品への深い敬意を保ちつつ、大人向けの骨太な人間ドラマとしても成立させる手腕は圧巻であった。
ジャンルを選ばず、どのような役柄にも誠心誠意向き合う。派手な自己主張を抑え、作品全体の調和を優先するストイックな姿勢は、映画界・演劇界の双方から絶大な信頼を勝ち得ていくこととなった。