蚊が吸血対象を見つける際、まず人間が吐き出す「二酸化炭素」や「体温」、そして「汗の成分」を感知して大まかに接近してきます。しかし、最終的に肌へ着地して針を刺す最後のトリガーを引いているのは、実は足の裏に生息する皮膚常在菌が作り出す特定の分泌物質です。
この事実を世界に知らしめたのは、当時高校生だった田上大喜さんによる独自の研究でした。「妹ばかりが蚊に刺される」という日常の素朴な疑問から妹と自分の足を培養・比較したところ、妹の足の裏には兄よりも圧倒的に多様な種類の常在菌が存在していることを突き止めたのです。この発見は国際的な科学コンテスト(Intel ISEF)でも極めて高い評価を受け、蚊の行動生態学に革命をもたらしました。
蚊(特に身近なヒトスジシマカやアカイエカ)は、特定の常在菌が皮脂や古い角質を分解する際に生じる代謝産物の匂いを嗅ぎ分けると、吸血意欲を刺激されて猛烈に引き寄せられます。つまり、身体のどの部位を刺されるにしても、最初の誘導ビーコンとなっているのは「足元」だったのです。