なぜ新生児や小児は脈拍や呼吸数が速く、高齢者は血圧が高くなりやすいのか。この背景には、心臓や肺の解剖学的構造と血管の老化メカニズムが存在します。
新生児や乳幼児は、1回あたりの心臓の拍出量(1回拍出量)が成人に比べて極めて小さいため、十分な血液と酸素を全身に巡らせるには拍動回数(脈拍)を増やして補う必要があります。呼吸機能も同様で、1回換気量が小さく肺胞面積が狭いため、呼吸数を増やすことでガス交換の総量を維持しています。成長とともに心筋や胸郭が発達するにつれ、脈拍や呼吸数は徐々に減少し、成人レベルへと落ち着いていきます。
一方、高齢者では真逆の生理変化が起きます。加齢に伴って大動脈をはじめとする主幹動脈の内膜・中膜が肥厚し弾力性を失う(動脈硬化)ため、心臓が血液を送り出したときの衝撃を吸収できず、収縮期血圧(上の血圧)が跳ね上がりやすくなります。反対に、拡張期血圧(下の血圧)は血管のしなやかな戻りが弱まるため低下し、脈圧(上と下の差)が開くのが特徴です。
さらに高齢者は、視床下部にある体温調節中枢の感度低下や骨格筋量の減少(サルコペニア)により、基礎代謝が落ちて平熱が35度台後半になるケースが少なくありません。平常時の生体リズムを把握していなければ、37.2℃程度の微熱であっても重篤な細菌感染症を見過ごす原因になります。