生物学的にサケは白身魚に分類される。それにもかかわらず、なぜ食卓に並ぶ身はこれほどまでに濃い紅色を放つのか。その鍵を握るのがサケ科の魚類がプランクトンや甲殻類を捕食して体内に蓄積する天然色素、カロテノイドの一種である。
この物質の化学構造を1930年代に解明し、ノーベル化学賞を受賞したのがドイツの生化学者リヒャルト・クーンだ。彼が開拓した有機化合物の世界は、現代の抗酸化生化学において極めて重要な礎となっている。サケは川を遡る際、膨大な酸素を消費して筋肉を酷使する。その過程で発生する破壊的な酸化ストレスから筋線維を守るために、筋肉中へアスタキサンチンを集中的に蓄える生態戦略を進化させてきた。