幸田町は、全国で生産される筆柿の約95%を占める一大産地だ。その名の通り、毛筆の筆先のような独特の尖った形状をしており、小ぶりながらも甘みが強く濃厚な味わいが特徴とされる。通常の甘柿よりも収穫時期が早く、秋の訪れをいち早く告げる味覚として親しまれてきた。
この地域と柿の関わりは古く、徳川家康を生んだ三河の歴史とも深く結びついている。江戸時代、三河武士たちのスタミナ源や貴重な糖分補給源として、柿の栽培が推奨されたという記録が残る。厳しい気候を耐え抜く強い作物が育まれた歴史的背景があるのだ。
今や筆柿は単なる農作物にとどまらず、幸田町のアイデンティティそのものとなっている。歴史のロマンに思いを馳せながら味わう一口は、また格別の味わいをもたらしてくれる。