この常識破りのプロジェクトを指揮したのが、クリエイティブディレクターの原野守弘氏である。原野氏と制作チームが突き立てた目標はシンプルかつ過酷だった。一切のCG合成を行わず、現地で一発撮りした音と映像だけで作品を完成させるという決断だ。
森の傾斜面に全長数十メートルに及ぶ木琴を構築するため、ミリ単位の精密な音響設計と構造計算が実施された。木球が坂を転がり落ちる速度は、傾斜角度や気温、湿気による木材の摩擦係数の変化によって刻一刻と変動する。球が鍵盤に接触した際、完璧なテンポと正確な音高で音を奏でるよう、何百本もの木工パーツの長さや厚み、配置間隔が手作業で緻密に調整された。幾度もの失敗と再挑戦の果てに到達した完璧なピッチとタイミングは、職人技と物理工学が融合した奇跡の産物にほかならない。