ノンキャリアの警察官にとって、階級を上げるための唯一かつ最大の武器が昇任試験だ。特に最初の関門である巡査部長への試験は、勤務数年の若手警察官が一斉に挑む大激戦となる。日々の交番勤務や夜間警ら、事件処理の合間を縫って、憲法や刑法、刑事訴訟法といった膨大な法知識を頭に叩き込まなければならない。
試験は一次の筆記試験だけでなく、面接、逮捕術や射撃などの実技評価まで多角的に行われる。巡査部長から警部補、さらには警部へと昇任するにつれて合格率は急速に跳ね上がり、勉強量は受験生レベルに達する。休日に図書館に籠もり、家族との時間を削って法曹レベルの論述対策に追われる警察官の姿は珍しくない。
さらにノンキャリアにとって「見えない壁」として立ちはだかるのが警視正の階級である。警視正以上になると、身分が地方公務員から国家公務員(地方警務官)へと切り替わる。都道府県警察のノンキャリアの中から警視正に登り詰められるのは、全警察官の中でも一握りのスーパーエリートに限られる。叩き上げとしての矜持を胸に、現場の指揮官としてこの領域に到達する警察官は、組織内で絶大なる尊敬を集める存在となる。