一方で、入浴のタイミングを誤ると病状の急激な悪化を招きます。とくに「風邪の寒気がある時にお風呂に入ってはいけない」という鉄則は、生体の体温調節システムに基づいています。
寒気やゾクゾク感がある状態は、脳の視床下部が「設定体温を39度に引き上げよ」と命令を出し、筋肉を震わせ血管を収縮させて体内に熱を閉じ込めている最中(発熱上昇期)です。この時に湯船に入ると、温熱によって末梢血管が強制的に拡張してしまい、身体本来の熱産生プロセスと衝突を起こします。結果として極度の悪寒のぶり返しや、血圧の急降下による失神(ヒートショック・脳貧血)を引き起こす危険があります。
また、風邪のお風呂で悪化する理由として見落とされがちなのが「急激な脱水」と「エネルギー枯渇」です。40度前後の湯船に15分浸かるだけでも、体内から約500mlから800mlの水分が失われます。発熱ですでに水分が不足している身体に追い打ちをかけることになり、血液の粘度が高まって血栓リスクや全身倦怠感が増大します。熱が高い時期の身体は、体温維持と免疫応答だけで膨大なカロリーを消費しているため、余分な物理的負荷は極力排除しなければなりません。