市原隼人の真骨頂とも言える作品の一つが、大ヒットシリーズ『おいしい給食』で見せた給食絶対主義者の教師・甘利田幸男役だろう。1980年代の学校を舞台に、給食をいかに美味しく食べるかという一点に命をかける男の姿を、一切の妥協なく全身全霊で演じ切った。
一見すると滑稽とも言えるコミカルなシチュエーションに対し、市原は極めてシリアスかつ重厚なスタンスでアプローチする。その「真剣すぎるがゆえの滑稽さ」が生み出すシュールな笑いは、世代を超えて大反響を呼んだ。滑稽な動きの一つひとつに緻密な計算と肉体的負荷が掛けられており、コメディだからこそ求められる高度な演技技術と肉体表現の結実と言える。この役を通して彼は、自らの代表作を更新すると同時に、役者としての未知なる可能性を証明してみせた。