劇中で強烈なインパクトを残した桂田冬彦という男。このあまりにも個性的で不気味な人物を演じ切ったのが、実力派俳優の佐野史郎だ。今や伝説として知られる「おもちゃの木馬に乗って笑みを浮かべる場面」は、実は現場での即興やアドリブ、現場のひらめきから生まれた瞬間も多かったという。脚本に書かれたテキストを超え、役者の肉体を通してキャラクターが生み出された瞬間の熱量は凄まじい。
佐野史郎は単に奇妙な男を演じたのではない。マザコンであり、極度の潔癖症でありながら、妻への異常な執着心を見せる怪物を、悲哀と滑稽さを交えて繊細に表現した。視聴者が単に恐怖を感じるだけでなく、どこか哀愁すら覚えてしまう多面的な造形こそが、このキャラクターを不動の存在へと押し上げた最大の要因である。