「小で流しても便器からペーパーが消えたから問題ない」という認識は、配管トラブルにおける最大の盲点です。便器鉢内から水と紙が吸い込まれて見えなくなったとしても、それは排水サイホン作用によって便器のトラップを通過しただけに過ぎません。
トイレレバー大小の違いにおける本質は、便器から汚物を押し出す力だけでなく、床下の排水横引き管(横走り配管)を伝って屋外の公共下水桝まで汚物を運びきる「搬送性能」にあります。一般的な住宅では、便器から屋外の排水桝に至るまで数メートルから十数メートルの緩やかな傾斜配管が敷設されています。この配管内を固形物が進むためには、一定以上の水深と水流の持続時間が不可欠です。
トイレ小で紙を流すと詰まる理由は極めて物理的です。「小」のレバー操作では、排水弁が開いている時間が極めて短く設定されており、流れる水の総量と勢いが足りません。そのため、トイレットペーパーは便器を出た直後の床下配管内で水流を失って失速・沈降します。水だけが先に流れ去り、湿ったペーパーが配管底面に張り付いて残水乾燥を起こします。この状態のまま「小」での排水を繰り返すと、ペーパーがミルフィーユ状に幾重にも堆積し、最終的に排水管断面を完全に塞ぎます。
メーカー各社の公式技術資料や取扱説明書においても、トイレットペーパー流す基準として「トイレットペーパーを使用する場合は、使用量にかかわらず必ず『大』で流してください」と明確に規定されています。「小」はあくまで尿のみ(ペーパーを一切使用しない男性の小用など)を想定した水流設計なのです。