「こく一番」を語る上で最大の謎であり、訪れる者を驚愕させるのが、「チャーハンやカレーライスを頼むと、当たり前のように丼いっぱいのラーメンが運ばれてくる」という現象です。ミニラーメンではなく、単品で提供されるものと全く同じフルサイズのラーメンが添えられます。
この驚くべきスタイルの起源は、屋号にも刻まれているみどりや精肉店の歴史に直結しています。もともと肉の卸・小売りを営んでいた精肉店が母体となって誕生した同店は、肉の仕入れルートと目利きにおいて圧倒的な強みを持っていました。精肉を自前で調達できるからこそ、原価を極限まで抑えつつ、上質な肉をふんだんに使った料理を安価に提供する土台が整っていたのです。
では、なぜスープ代わりにフルサイズのラーメンを付けるようになったのか。その理由は、店主の溢れんばかりの心意気と、サービス精神の段階的なエスカレートにありました。創業当初、ご飯ものメニューには一般的な中華スープを添えていました。しかし、寒さの厳しい札幌の地で「もっと身体を温めてほしい」「スープに少し麺を入れてあげよう」という店主の気配りが始まり、麺の量が半玉になり、具材が乗り、気付けばチャーシューやメンマ、ネギが豪快に盛られた「通常の一杯」として完成してしまったのです。
常連客が「これじゃスープじゃなくて普通のラーメンじゃないか」と笑うと、店主は「腹いっぱい食って喜んでくれたらそれが一番だから」と笑顔で返したという逸話が残っています。損得勘定を完全に度外視したこの人情こそが、全国にファンを生み出し続ける原動力となっています。