「何かを変えることができる人間がいるとすれば、それは大事なものを捨てることができる人だ」——このあまりにも有名な台詞は、作品の文脈を超えて現代を生きる我々の胸を打つ。一見すると目的のために犠牲を辞さない冷酷な冷徹さを肯定しているようにも聞こえる。しかし、その奥底にあるのは、己の無力さに打ちのめされながらも前を向こうとする過酷な自己暗示だ。
完結から時間を経た現在、あらためて振り返ると、アルミン・アルレルトがこの言葉を吐き出した時の心情には恐ろしいほどの緊張感が漂っていたことがわかる。怪物を倒すためには自らも化け物にならざるを得ないという残酷なトレードオフ。彼自身が「人間性」や「平穏な日常」という最も大切なものを手放す恐怖に震えていたからこそ、あの言葉は狂気と背中合わせの悲壮感を帯びているのだ。