山留め支保工は、掘削時に周囲の土圧や水圧(側圧)に対抗して掘削空間を確保するための仮設構造物です。その主要構成要素である「腹起し」と「切梁(きりばり)」は、似たような鋼材(H形鋼など)が使われることが多いため混同されがちですが、構造力学上の役割と力の伝達方向は明確に異なります。
腹起しの土留めにおける役割は、親杭横矢板壁や鋼矢板壁、ソイルセメント柱列壁(SMW)などの山留め壁に水平に密着させ、壁面全体に作用する側圧を線状・面状に受け止めることです。そして、受けた荷重を切梁へと点受けで伝える「梁(Beam)」として機能します。対する切梁は、対向する腹起し同士の間、あるいは切梁受け構台との間に突っ張り棒のように設置され、圧縮力を負担する「柱・ストラット(Strut)」の役割を果たします。
現場では「山留め壁 → 腹起し(曲げ・せん断) → 切梁(軸力・圧縮) → 対向壁またはアンカー」という明快な力学的ルートで荷重が処理されます。腹起しが十分に剛性を保ち、壁面と隙間なく密着していなければ、局所的な集中荷重によって山留め壁がはらみ出し、大規模な地盤沈下や土砂崩壊を引き起こす引き金となります。