レギュラー陣のアンサンブルも見事だった。桜金造が放つ予測不能なアドリブや強烈なキャラクター造形は、舞台上に心地よい緊張感と爆発的な笑いをもたらした。共演者が思わず素で吹き出してしまう場面や、台本にない突飛なリアクションがそのまま放送に乗ることも珍しくなかった。
NHKエンタープライズが手がけた舞台美術も見逃せない。下町の長屋の細部に至るまで作り込まれた大道具や小道具は、本物の歌舞伎や大劇場公演に匹敵するクオリティを誇っていた。舞台裏では、限られたリハーサル時間の中で演者とスタッフが丁々発止のやり取りを繰り広げ、本番一発勝負のテンションを作り上げていたという。失敗を恐れず、ハプニングすら笑いに変えてしまう現場の熱気こそが、作品に生命を吹き込んでいたのだ。