調音のメカニズムを理解した後は、舌の筋肉そのものの反応速度を高めるフィジカルトレーニングが必要です。過酷なセリフ回しを要求される声優業界の養成所では、毎朝のルーティンとして綿密な声優発声練習メニューが組み込まれています。以下に紹介するドリルは、自宅で1日3分から実践できる即効性の高いプログラムです。
ドリルA:母音分離による「調音点マッピング」
子音の摩擦に惑わされないため、フレーズの母音構造だけを取り出して発音します。
「しゅじゅつしつでしゅじゅつちゅう」の母音構造は以下の通りです。
【 U - U - U - I - U - E - U - U - U - U - U 】(う・う・う・い・う・え・う・う・う・う・う)
まず、この「う・う・う・い・う・え…」という母音の連続を、口の形を正確に変形させながら等間隔のスタッカートで発声します。次に、その母音の配置を崩さないまま、表面に極めて薄く子音(S, Z, TS, CH)の衣をかぶせるように重ねていきます。この練習により、無駄な力みが抜け、口腔内の響きが均一に保たれるようになります。
ドリルB:舌尖と舌背を独立分離させるサ行発音トレーニング
サ行の摩擦をクリアにするには、舌の先と奥を完全に独立してコントロールできなければなりません。
- 舌先を下の前歯の裏につけたまま、舌の中央部だけを持ち上げて上顎に近づけ「スィー」と息を擦らせる(舌背の強化)。
- 次に舌先を上の前歯の裏に素早くタッチし、「ツッ」と鋭く空気を弾く(舌尖の強化)。
- これを「スィー・ツッ・スィー・ツッ」とメトロノームに合わせてテンポ80から120まで引き上げて反復する。
このサ行発音トレーニングを反復すると、舌の各部位を司る運動神経細胞が刺激され、舌が絡まる感覚が急速に消失していきます。