2000年代半ば、沖縄のデイゴは過去最大の危機に直面した。島々から鮮やかな赤が姿を消したのである。その元凶は、体長わずか1〜1.5ミリメートルほどの小さな昆虫「デイゴヒメコバチ(Quadrastichus erythrinae)」であった。
2004年の悪夢:わずか数ミリの害虫が生態系を破壊
2004年、沖縄本島で初めて被害が確認されたこの外来ハチは、新芽や若い葉の中に卵を産み付ける。幼虫が寄生すると葉や枝が不自然に瘤(こぶ)状に腫れ上がり(虫こぶ形成)、光合成能力を奪われた樹木は急速に衰弱する。最終的には葉をすべて落とし、数年のうちに枯死に至る。
被害は急速に拡大した。首里城公園や街路樹、名護市の指定天然記念物に至るまで、県内のデイゴの9割以上が開花不能に陥った。かつて春になれば各地を彩っていた風景が、乾いた茶色の枯れ枝ばかりの哀しい姿へと変貌したのだ。