劇場の熱気をそのままパッケージングすることは可能なのか。映像メディアとの対峙もまた、彼が挑み続けてきた重要なテーマの一つだ。WOWOWによる臨場感あふれる舞台中継や、NHKオンデマンドでのアーカイブ配信を通じて、劇場に足を運べない地方のファンや若い世代へとその熱量は確実に波及してきた。
さらに近年では、Netflixをはじめとするグローバル配信プラットフォームの普及により、舞台作品のドキュメンタリーや映像化されたパフォーマンスが国境を越えて瞬時に届く時代になった。しかし、どれほどデジタルが進化しようとも、生身の役者が流す汗の匂いや、客席の息を呑む気配に勝るものはない。「映像は劇場の記憶を呼び覚ますためのトリガーに過ぎない」。劇場の神聖さを信じ抜くからこそ、メディアの特性を巧みに利用し、新たな観客を劇場へと誘い続けている。