ヒロインの成長を語る上で欠かせないのが、父・小原善作を演じた小林薫の圧倒的な存在感です。娘を厳しく殴りつけながらも、夜中にミシンの前で眠る糸子にそっと毛布をかける。火事で店が燃えた際には取り乱しながらも家族を守ろうとする。善作が見せた不器用な昭和の父親像は、視聴者の涙を絞り取りました。
第10週「二度目の正直」において、善作が温泉旅行先で倒れ、家族に見守られながら息を引き取るまでの描写は、日本のテレビドラマにおける「死の描写」の到達点と評されています。臨終の間際に夢の中で若き日の千代と踊る幻想的なシーンは、小林薫の真骨頂と言える名演でした。
また、放送から年月が経過した現在、物語に深みを与えた偉大な名優たちが世を去っています。
- 祖母・ハル役(正司照枝さん):かしまし娘として一時代を築いた照枝さんは、厳しさとユーモアを併せ持つ祖母を好演。糸子の最強の味方として温かい笑いを届けました。
- 神戸の祖父・松坂貞三郎役(宝田明さん):映画界のレジェンドとして、上流階級の気品と孫娘への深い慈愛を圧倒的なダンディズムで表現しました。
彼らが遺した至高の演技は、映像の中で永遠に色褪せることなく、作品の重厚な土台として生き続けています。