本作が持つ異様なまでのリアリティは、現実の日本で断行された新紙幣発行という大きな転換期を背景に敷いている点にある。長年、日本の最高額紙幣の象徴として親しまれた福沢諭吉から、近代日本経済の礎を築いた渋沢栄一への刷新。この表面的な顔の掛け替えの裏側で、既存の金融・通貨制度には目に見えない歪みが生じていた。
劇中では、新旧の1万円札が持つ微細なデザインの違いやホログラム技術の盲点を突いた巧妙なトリックが描かれる。新紙幣への移行期に起きた謎の資金流出と、現金の持つ匿名性を悪用したマネーロンダリング。まさに現代社会が抱える金融システムの脆弱性を容赦なく抉り出す視点は、観る者に強い現実味と恐怖を植え付ける。