中国の大手映像プラットフォームであるYouku(優酷)やiQIYI(愛奇芸)、ビリビリ動画(Bilibili)において、『火影忍者』のアニメ総再生回数は累計数百億回を記録しています。なぜ本作はこれほどまでに中華圏の若者(いわゆる80後・90後・00後世代)を惹きつけたのでしょうか。
第一に挙げられるのは、武侠小説の「侠(きょう)の精神」とナルトの「忍道」の完全な合致です。弱者が理不尽な運命や孤独に抗い、己の信念を曲げずに仲間を守りながら頂点へと上り詰める物語構造は、中国の伝統的な英雄譚と深く共鳴しました。
第二に、中国語吹き替え版(配音版)の並外れたクオリティがあります。特に台湾で制作された吹き替え版は中国本土のテレビ放映やインターネット黎明期にも広く普及しました。中でも主人公・ナルトの声を長年担当した声優の蒋篤慧(ジャン・ドゥーフイ)氏(2019年逝去)の熱演は、中華圏のファンにとって「青春そのものの声」として今なお神格化されています。少年期のやんちゃさから青年期の葛藤までを見事に表現した吹き替えの存在が、言語の壁を完全に無力化しました。