累を語る上で避けて通れないのが、「父」「母」「兄」「姉」といった役割を他の鬼たちに演じさせていた「偽りの家族」の存在です。彼は自らの血を分けた鬼たちに蜘蛛の姿と能力を与え、那田蜘蛛山で疑似家族として共同生活を送らせていました。
しかし、そこに通い合う温かい情愛は存在しませんでした。累が求めたのは「親は子を守り、子は親に従う」という絶対的な役割の強制であり、少しでも意に沿わない行動や不甲斐なさを見せた者は、容赦なく陽の光で焼き殺すなどの凄惨な拷問・処刑に処されました。恐怖と暴力によってしか繋ぎ止められない歪な支配構造――それでも累が家族ごっこをやめられなかった理由は、「失ってしまった本物の家族の絆」を何としてでも取り戻したかったからに他なりません。
炭治郎が禰豆子を命がけで庇う姿を見た累は、激しい衝撃と嫉妬を覚えます。「本物の絆」を目の当たりにしたことで自らの偽りの関係に苛立ちを募らせ、禰豆子を強奪して妹にしようと執着を深めていきました。この歪んだ行動原理こそが、累というキャラクターが抱える最大の悲劇の根源でした。