日本人が持つタコへの視覚的イメージは、歴史的に見てもきわめて独特だ。江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎が描いた有名な春画『蛸と海女』は、海洋生物を官能的かつダイナミックな芸術表現へと昇華させた歴史的傑作として世界中で知られている。北斎の巧みな線画と流暢な構図は、現代のイラストレーターたちにも多大な影響を与え続けている。
海外に目を向けると、西欧文化におけるタコは長らく神話上の怪物クラーケンとして恐怖の象徴だった。しかし、ディズニー映画『リトル・マーメイド』に登場する海の魔女アースラの流麗な動きとキャラクターデザインは、悪役でありながら圧倒的な魅力を放ち、アニメーション界におけるタコモチーフの可能性を決定的に押し広げた。東洋と西洋、それぞれの歴史的背景が重なり合い、現在の豊かな表現の基盤が作られたのだ。