一歩館内に足を踏み入れれば、そこは外の喧騒とは遮断された密室の熱帯だ。数十人が一斉に躍動してもなお余りある天井高とフロア面積。鏡に映る己の姿と向き合い、何度も同じフレーズを繰り返すダンサーたちの表情には一切の妥協がない。
「ここで出せる音と、実際の舞台での鳴り方は直結している」と、都内の演出家は語る。どれだけ仮想現実やシミュレーション技術が進化しようとも、床を力強く踏みしめる振動や、空間全体に響き渡る生の響きを身体で覚える作業に近道はない。この広大な空間こそが、表現者たちの肉体を極限まで研ぎ澄ます砥石となっている。