問題の所在はオフィスにとどまらない。カフェやシェアオフィス、新幹線の車内といった公共空間においても、声の大きさを巡る社会的な対立は新たなフェーズを迎えている。高性能なアクティブノイズキャンセリング(ANC)イヤホンが広く普及したことで、人々の「周囲の騒音に対する閾値(耐性)」はかつてないほど過敏になった。
イヤホンを装着している本人が無意識に大声で通話してしまう現象や、空間の静寂を破る会話に対して、周囲からの視線は以前にも増して厳しい。一部のコワーキングスペースでは、マイクの入力レベルや声量をモニタリングするスマートデシベルメーターが設置され、音響的なマナーを守ることがデジタル技術によって可視化されるケースも増えている。音のプライバシーを守ることが、現代の都市生活における新たな基本的マナーとなりつつあるのだ。