最新の意識調査や市場データは、不貞行為の引き金がかつてとは明らかに変化していることを告げている。避妊具大手の相模ゴム工業が長年実施してきたニッポンの性に関する大規模調査をはじめ、近年の関係性の変化を追うレポートでも、既婚者の一定数が「配偶者以外との関係」に足を踏み入れている実態が浮かび上がる。そこにあるのは、劇的なロマンスの追求というよりも、日々のルーティンに埋没する自身への鬱屈だ。
取材に応じた30代後半の男性会社員は、「最初はほんの雑談相手だった」と回想する。残業帰りの居酒屋や社内チャットツールでの他愛ない冗談。それがやがて、家庭では満たされない「個人としての存在価値」を確かめる行為へと変貌していった。「引き返すタイミングは何度もあったはずなのに、相手からの通知ひとつで理性が吹き飛んでしまった」と彼は声を潜める。
心理的な境界線が崩壊するのは、怒りや欲望が高まった瞬間ではない。むしろ、疲弊と諦めが日常を覆い尽くした静かな夜だ。罪悪感は最初こそ鋭く心を刺すものの、回数を重ねるごとに鈍麻し、やがて「これくらいは自分へのご褒美だ」という身勝手な自己正当化へとすり替わっていく。