近代民俗学の父と称される柳田國男。そして、地元遠野で生まれ育ち、数々の口承を彼に提供した佐々木喜善。二人の運命的な出会いこそが、名著『遠野物語』を生み出す原動力となった。佐々木が夜な夜な語って聞かせた山里の怪談や不思議な出来事は、柳田の洗練された文体によって文学作品へと昇華された。
学問としての民俗学が確立していく過程で、妖怪伝承・怪異文学は単なる都市伝説や迷信ではなく、人間の心理や共同体の記憶を映し出す鏡として再評価された。彼らが交わした書簡や取材メモの原本を辿ると、記録することへの執念と、消えゆく物語への深い愛着がひしひしと伝わってくる。