伝統と格式を重んじる将棋界において、橋本崇載の存在は圧倒的に異質だった。金髪や紫のパンチパーマで対局場に現れ、カメラを真っ向から見据えて不敵に笑う。その姿は、ストイックな求道者が集う盤上の世界に投じられた劇薬そのものだった。
とりわけファンの脳裏に刻まれているのが、NHK杯テレビ将棋トーナメントでの伝説的なインタビューだ。同世代のライバルである佐藤紳哉が見せた独特の決め台詞と仕草を、直後の対局インタビューで一言一句違わずに完コピしてみせたパフォーマンスは、お茶の間に爆笑と衝撃をもたらした。ABEMAの中継番組でも、歯に衣着せぬ軽妙な解説で将棋ファン以外の層をも魅了し、一躍時の人となった。
単なる目立ちたがり屋では決してない。プロ棋士の頂点、わずか10人程度しか辿り着けない順位戦A級に名を連ねた実力者であり、羽生善治をはじめとするトップ棋士とも互角の火花を散らした。確固たる実力という裏付けがあったからこそ、彼の型破りな言動は将棋界のカンフル剤として熱烈に支持されたのだ。