2026年4月、オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブの18番グリーン。日本中が息を呑み、歓喜の涙を流したマスターズ・トーナメント制覇の歴史的瞬間にも、芽緯夫人と子供の存在が大きな陰の力となっていた。アジア人として初のグリーンジャケットに袖を通したあの激闘の最中、パトロンの地鳴りのような歓声が響く異様な熱狂の中でも、松山が冷静さを失わなかったのは「帰るべき場所」がブレずに存在していたからだ。
過酷を極めるメジャー選手権の舞台では、技術の差など紙一重に過ぎない。最後の勝敗を分けるのは、どれだけ平常心を保てるかというメンタルの純度だ。試合が終われば、ゴルフの話を一切持ち込ませない安らぎの空間を作り出す。夫人が作り上げたその聖域があったからこそ、オーガスタの難関アーメンコーナーでも、揺るぎない決断を下すことができた。