介護現場や当事者コミュニティの取材を進めると、感情失禁に対する「社会的認知の低さ」が引き起こす二次的な悲劇が浮き彫りになります。
脳梗塞を発症した70代の男性患者は、リハビリ専門病院の面会室で次のように当時の苦しい胸中を語っています。
「看護師さんが『今日はお天気が良くて気持ちいいですね』と声をかけてくれただけで、涙が滝のように流れて止まらなくなってしまったんです。看護師さんは『そんなに辛いんですか』と慌てて背中をさすってくれるのですが、私自身は辛くもなんともない。ただただ情けなくて恥ずかしくて、人と顔を合わせるのが怖くなり、病室に閉じこもるようになりました」
また、介護を行う家族側の苦悩も深刻です。SNSや相談掲示板には次のような切実な書き込みが散見されます。
「父親が脳出血で倒れて以来、毎日の食事介助のたびに大声で泣き出します。『何か痛いところがあるの?』『ご飯がまずい?』と聞いても泣き続けるばかり。母も私も精神的に追い詰められ、父が認知症で性格が狂ってしまったのではないかとノイローゼ寸前でした」(50代・長女の手記より)
感情失禁を「わがまま」「性格のゆがみ」「うつ状態によるアピール」と誤解した家族が、「男のくせにメソメソ泣かないで!」「しっかり我慢して!」と叱責してしまうケースは少なくありません。しかし、叱責された本人はブレーキが利かないためにさらに動揺し、発作が悪化するという悪循環に陥ります。病態の真実を知ることが、家族と本人の双方を救う第一歩です。