宇多田ヒカルのボーカルを聴くとき、私たちはどこか切なく、胸を締め付けられるような感覚を覚える。この独特の「切なさ」や「ビブラートの揺れ」は、まさに藤圭子の遺伝子そのものだ。R&Bのグルーヴに乗せながらも、どこかウェットで日本的な情緒を感じさせるのは、母から受け継いだブルースの血が流れているからに他ならない。
特に中音域から低音域にかけてのハスキーな響きや、言葉の語尾に宿る余韻の残し方は、藤圭子の歌唱スタイルと驚くほど酷似している。ヒカル自身も過去のインタビューで、自分の歌声の中に母の響きを感じする瞬間があると語っている。それは意図して真似たものではなく、身体の奥底から自然と湧き上がる血の記憶なのだ。