脚本を手掛けた岡田惠和の最高傑作との呼び声も高い本作。その神髄は、登場人物の誰一人として置き去りにしない眼差しの温かさにある。
乙女寮の仲間たち、すずふり亭の料理人やホールスタッフ、あかね荘の個性豊かな住人たち。群像劇としての完成度が極めて高く、脇を固めるキャラクター一人ひとりに人生があり、ドラマがある。途中で姿を消した父・実(沢村一樹)の記憶喪失という重いテーマを扱いながらも、物語が暗闇に沈むことはなかった。絶望の淵にいる人間に対しても、周囲が静かに手を差し伸べる。その「過剰ではない優しさ」の距離感が、視聴者の心にしんしんと染み渡ったのだった。