なぜここまで村井氏の予測手法は評価が二分されるのでしょうか。そこには、「測量工学」と「地震学(地球物理学)」のアプローチの違いという構造的な問題が存在します。
地震学は、プレート境界や活断層にかかる応力、地下数十キロメートルの岩盤の摩擦破壊プロセスを理論的・実験的に解明しようとします。気象庁や文部科学省の地震調査研究推進本部は「現時点の科学力で、日時と場所を特定した確度の高い地震予知は不可能」と公式に結論づけています。
対する村井氏の測量工学は、地下の破壊メカニズムではなく「地表の観測点がどう動いたか」という表面データのみを重視します。しかし、地表のGPSデータは地下の歪みだけでなく、雨による地盤の緩み、地下水の汲み上げ、電子基準点機器のメンテナンス、季節風など膨大な外部要因で数ミリから数センチ変動します。地震学者側は「それらの環境ノイズを取り除かずに異常変動と呼ぶのは乱暴だ」と批判し、村井氏側は「従来の地震学が予知に失敗し続けている以上、新しい工学的アプローチを否定すべきではない」と主張する構図が続いています。
さらに、社会的な関心が極めて高い「南海トラフ巨大地震」や「首都直下地震」の予測に関しても、JESEAは定期的に警戒情報を発出していますが、広域な歪み観測から具体的な破断タイミングを正確に予測できているとは学術的に認められていません。