本作の鑑賞者を驚かせたのは、俳優陣によるリアリティあふれる演奏シーンです。楽器演奏の経験がほぼ皆無だった広瀬すずと山﨑賢人は、クランクインの約半年前から過密スケジュールの合間を縫って楽器の猛特訓を開始しました。
宮園かをりを演じた広瀬すずは、ヴァイオリンの構え方や弓の返し方、身体全体でリズムを取るダイナミックな演奏フォームを徹底的に研究。当時のメイキング映像やインタビュー資料によると、指先にタコを作りながらも「体で音を覚える」姿勢を崩さず、天真爛漫で情熱的な演奏スタイルを画面上に再現しました。劇中で広瀬の演奏音源および演奏モデルを担当したのは、国内外で高い評価を受ける実力派ヴァイオリニストの篠原悠那です。
一方、有馬公生役の山﨑賢人も、楽譜が読めない状態から指導を受け、鍵盤を叩く手の形や視線の運び、ペダリングに至るまでピアニストとしての身体所作を体に叩き込みました。完璧主義者として機械のように正確に弾く序盤から、感情を解き放って弾くクライマックスに至る心理的変化を指先で見事に表現しています。音源の吹き替えを担当したのは、ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール等で入賞経験を持つ天才ピアニストの阪田知樹です。
さらに、公生の幼馴染である澤部椿役の石井杏奈(当時E-girls)が見せた健気な失恋の芝居や、サッカー部のスター・渡亮太役の中川大志が醸し出す軽やかさと内に秘めた優しさが、演奏シーンの緊張感と見事なコントラストを成しています。主題歌となったいきものがかりの「ラストシーン」は、映画のために書き下ろされた珠玉のバラードであり、エンドロールで流れるメロディが鑑賞後の余韻を何倍にも深めています。