高校野球の開会式において、もっとも感情を揺さぶられる瞬間といえば選手宣誓です。数万人の観衆と全国の視聴者が見守る静寂の中、マウンド前方へ歩み出た主将が右手を高々と掲げ、言葉を紡ぎ出す場面には毎年大きな注目が集まります。
かつては「宣誓、我々選手一同は、スポーツマンシップに則り…」といった定型句が主流でしたが、1990年代以降、球児自身の言葉で時代背景や感謝を伝えるスタイルへと大きく変化しました。特に2011年春、東日本大震災直後に宮城・石巻工の阿部主将が行った「人は誰しも、助け合わずには生きていけません」「生かされている命に感謝し、全力でプレーします」という宣誓は、日本中に深い感動と勇気を与え、歴代屈指の名宣誓として今も語り継がれています。
宣誓を務める選手は、キャプテン番号である「背番号1」などをつけた主将たちが集まる組み合わせ抽選会で、くじ引きによって選出されます。選ばれた主将は開幕までの数日間、指導者や家族、仲間と相談しながら一文字一文字に想いを込め、魂を込めた原稿を練り上げます。等身大の10代が抱く感謝と決意がストレートに響くからこそ、観る者の涙を誘うのです。