インターネット上の一部では「若い頃からルックスだけでトントン拍子に売れた天才」と捉えられがちですが、実態は大きく異なります。20代前半の爆発的ブレイクの裏で、妻夫木聡自身は強い危機感と自己否定に苛まれていました。
当時の手記やドキュメンタリー番組において、本人は「爽やかな好青年というイメージばかりが先行し、中身が追いついていないのではないか」という葛藤を繰り返し告白しています。いわゆる“イケメン枠”に安住することを良しとせず、映画の現場に自ら飛び込み、泥臭い役柄を求めて貪欲に演技力を磨き続けました。
その転換点となったのが、2003年の映画『ジョゼと虎と魚たち』や、2010年の映画『悪人』です。『悪人』では自ら髪を金髪に染め上げ、解体現場で働く孤独な殺人犯・清水祐一役を鬼気迫るリアリティで熱演。第34回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞し、世間の「爽やかな人気俳優」という既成概念を完全に打ち破りました。アイドル的な消費に抗い、泥臭い鍛錬を重ねたことこそが、彼が消えることなく現在まで生き残った真因です。