作中に登場する部隊は、史実における海軍の「第721海軍航空隊」(通称・神雷部隊)をモデルにしています。米軍から「BAKA(バカ・ボム)」と蔑称された桜花一一型は、航続距離が極めて短く、母機である一式陸攻に吊り下げられて目標付近まで接近する必要がありました。
しかし、桜花を吊るした一式陸攻は重量過多で著しく運動性が低下し、米軍戦闘機の格好の標的となりました。史実でも多くの母機が桜花を射出する前に撃墜され、母機の搭乗員たちもまた甚大な犠牲を払ったのです。
『音速雷撃隊』が傑出しているのは、特攻機に乗る野上少尉だけでなく、彼を目的地まで送り届ける一式陸攻のクルーたちの葛藤にも深く光を当てている点です。「絶対に野上を敵艦まで送り届ける」という母機搭乗員たちの壮絶な覚悟と連帯感は、史実の神雷部隊が直面した残酷な現実を見事に物語へと昇華させています。