『池袋ウエストゲートパーク』の劇中で流れる音楽は、単なるBGMの枠を完全に超えていました。宮藤官九郎によるユーモアとバイオレンスが交錯する脚本に対し、堤幸彦監督は「音のコントラスト」を巧みに操ることで、視聴者の感情を極限まで揺さぶる演出を施しました。
その最たる例が、窪塚洋介演じるG-Boysのヘッド「キング」の登場シーンです。暴力と混沌が支配するカラーギャングの世界において、キングが突如として流すバッハの「G弦上のアリア」は、キャラクターの底知れない狂気と絶対的なカリスマ性を強烈に演出しました。白い衣装を身にまとい、優雅なクラシック音楽に合わせて踊るように人を痛めつける異様な姿は、当時の若者たちに強烈なトラウマと憧れを同時に植え付けたのです。
また、サウンドトラックを手掛けた音楽プロデューサー・羽毛田丈史らによる劇伴音楽(サントラ)は、当時のアンダーグラウンドで流行していたドラムンベース、ビッグビート、ミクスチャー・ロックを大胆に取り入れていました。緊迫したサスペンスシーンや派手なアクションシーンで鳴り響く「Kick it loud」をはじめとするインスト曲は、2000年代初頭のクラブカルチャーの熱気をそのままテレビのお茶の間へ持ち込むことに成功しました。