パブリックドメインの楽譜を集積したIMSLPは、世界中の音楽家にとって不可欠なデジタルライブラリだ。無料で過去の様々な版を閲覧できる利便性は計り知れない。しかし、そこには思わぬ落とし穴が潜んでいる。
IMSLPにアップロードされている旧時代の楽譜には、19世紀末のロマン主義的な過剰な改変や、校訂者独自の指使いが印刷されているケースが目立つ。ショパン自身が書いたペダル記号やスラーが消され、勝手なダイナミクスが追加されていることも珍しくない。無料譜面を練習の主軸にする場合、現代の標準的な演奏解釈とズレが生じる危険性を常に意識し、ヘンレ社などの最新原典版との突き合わせ作業が欠かせない。