鱧という魚は、小骨の多さゆえにそのままでは食べられない。皮一枚を残して身だけに細かく包丁を入れる「骨切り」は、和食における最高峰の職人技だ。日本料理研究会などの専門機関でも、この技術の継承と向上は常に議論の対象となってきた。人気漫画『美味しんぼ』でも描かれたように、ミリ単位の誤差が食感を大きく左右する繊細な作業である。
サッと熱湯にくぐらせ、氷水で締めた「湯引き」は、まるで牡丹の花が咲いたかのような美しい姿を見せる。梅肉や酢味噌を少しだけ添えて口に運べば、淡白ながらも奥行きのある脂の旨みが広がる。職人の骨切り技術が完璧であればこそ、口の中で骨を感じさせることなく、フワッとした雪解けのような食感だけが残るのだ。